先日、富山県美術館で開催されている、テオ・ヤンセン展に行ってきました。テオ・ヤンセンは、オランダの造形作家。ストランドビーストという、風を動力にして砂浜を歩く巨大な人工生命体を作り続けている芸術家です。
まずは電車に乗るという小さな挑戦から
実は今回、美術館に行くこと以上に、ちょっと楽しみにしていたことがありました。それは……携帯に入れたSuicaを使い電車に乗ること。普段と違うことをしてみようと思い、電車に乗って出かけました。
そして、いざ改札へ。携帯をを「ピッ」。何事もなかったかのような顔で、スッ。と通り抜けました。表面上はかなり平静を装っていましたが、内心は、反笑い「おっ、できた。」でした(笑)
そんな小さな達成感を味わいながら、富山県美術館へ向かいました。
そして、テオ・ヤンセン展へ

シルバーウィークということもあり、かなり混んでいるのではないかと思っていましたが、思っていたよりもスルッと入場。そして展示室で目に入ってきたのが、ストランドビースト。
正直なところ、よくこんなものを作れるなというのが最初の感想でした。細いチューブや多数の部品が組み合わされ、それぞれが連動して動く。止まっている姿だけを見ると、複雑な構造物です。
ところが、風を受けて動き始めると、まるで生き物のように歩く。これが非常に面白い。
なぜ、こんなに「生き物らしく」動くのか?
ここには、単なる芸術作品というだけではない、興味深い仕組みがあります。テオ・ヤンセンは大学で物理学を学び、ストランドビーストは1990年頃から進化を続け、これまでの作品を進化の時代に分けて紹介しています。
特徴的なのが、脚の動きです。人間の脚は、股関節、膝関節、足関節など、複数の関節が連動することで、歩くという複雑な動作を生み出します。ストランドビーストにも、これに少し似た考え方があります。
複数の棒状の部品を関節でつなぎ、回転運動を組み合わせることで、足先が歩行に適した軌道を描くように設計されています。棒をたくさんつないだだけに見えて、実はかなり計算された動きをしている。
ここが面白いところです。
人間の身体も、考えてみれば超高性能なストランドビースト

ここからは、完全に私の仕事目線です。ストランドビーストを見ながら、これ、人間の身体にも似ているなと思いました。
人間の身体も、単純に骨がある、筋肉があるだけではありません。骨と骨が関節を作り、筋肉が関節を動かし、腱が力を伝え、靭帯などが関節の安定性に関わり、さらに脳や神経系が全体の動きを調整しています。
歩くという、一見単純な動作でさえ、たくさんの部品が絶妙に連動して成立しています。だからこそ、どこか一部分の状態が変わると、動き全体に影響が出ることがあります。
例えば、膝が痛いという症状があったとしても、膝だけを見ればすべて説明できるとは限りません。股関節の動き。足首の動き。筋力。身体の使い方。歩き方。過去のケガ。こうしたものが複雑に関係している場合があります。
身体は、思っている以上に複雑です。
ただし、人間の身体は壊れた部品を交換すればOKではない

ここが機械と人間の大きな違いです。ストランドビーストは、構造を変更して、より良い動きを目指して改良できます。
一方、人間の身体は、じゃあ膝を新品に交換しましょうとはいきません(笑)だからこそ、今ある身体をどう使うか。そして、どう整えていくか。という考え方が大切になります。
テオ・ヤンセンがすごいと思ったこと
私が今回特に感心したのは、完成したものを作って終わりではないというところです。ストランドビーストは1990年から作られ続け、作品ごとに構造や機能が変化してきました。
歩くだけではなく、方向転換したり、環境に適応したり。風を利用して動くという基本的な考え方を持ちながら、その中で改良を重ねています。これは身体にも通じる部分があります。
身体も、一度治したから、これで一生大丈夫というものではありません。年齢、仕事、スポーツ、生活習慣などによって、身体への負荷は変わります。
だからこそ、その時々の身体に合わせて、見直していく。これが大切なのだと思います。
メンテナンスは、壊れてからするものではない
接骨院で仕事をしていると、痛くなったから来ましたという方がたくさんいらっしゃいます。もちろん、それは大切なことです。痛みが出たら、まず原因を確認して適切に対処する。これは基本です。
でも、その先にはもう一つあります。なぜ、そこに負担が集中したのか?ということです。身体をストランドビーストに例えるなら、この部品が壊れただけを見るのではなく、なぜ、この部品に負担が集中したのだろう?と考える。
そこまで考えることで、身体の見方が少し変わってきます。
今回、私自身も少し刺激をもらいました
今回のテオ・ヤンセン展。作品そのものが素晴らしかったのはもちろんですが、それ以上に、もっと工夫してみようという気持ちをもらいました。
身体のことも、治療のことも、まだまだ考えることがあります。今までこうだったから、これからもこうではなく、少しずつ見直す。試してみる。うまくいかなければ修正する。そして、また次へ進む。
テオ・ヤンセンがストランドビーストを進化させ続けているように、私も治療や身体について、もっと良い方法はないだろうか?と考え続けていきたいと思います。

