FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)

FAI画像

椅子から立つとき、靴下を履くとき、脚の付け根がグッと詰まる。その痛みの正体のひとつが、股関節インピンジメント(FAI)です。

FAIは「大腿骨寛骨臼インピンジメント」の略で、医療の現場では「FAI症候群」とも呼ばれます。

FAIとは

骨の形だけでは、病気とは言えません

股関節は、骨盤側の受け皿(寛骨臼)に、太ももの骨の先(大腿骨頭)がはまる関節です。骨にわずかな出っ張りがあると、深く曲げたときに骨同士がぶつかります。

間にある関節唇(受け皿のふちのクッション)は、ドアに指を挟んだときのような目にあいます。

FAIの3つのタイプ

  • ピンサー型:受け皿が深く、ふちが当たる。30〜40代の女性に多い傾向
  • カム型:太ももの骨の付け根が出っ張る。20〜30代の男性に多い傾向
  • ミックス型:両方がそろっている
FAIのタイプと、股関節の画像

ここで、意外な数字があります。症状のない人の股関節2,114個を集めた研究で、カム型の出っ張りは37%に見つかりました。

だから国際合意は、FAI症候群の診断に「症状」「診察の所見」「画像」の3つがそろうことを求めています。レントゲンに写っただけでは、FAIとは言えないのです。

では、出っ張りが写っていても痛くない人は、何もしなくていいのでしょうか。痛みがなく、動きにも困っていないなら、慌てて手を打つ必要はないと考えられています。

セルフチェックと検査

3問チェックと、病院での検査

あてはまる数が多いほど、一度診てもらう価値があります。診断ではなく、目安です。

  • 椅子から立つ、靴下を履く、車の乗り降りで、脚の付け根が痛む・詰まる
  • 深くしゃがむ、あぐらをかくと、同じ場所が痛む
  • 痛い場所を聞かれると、手のひらを脚の付け根に当てて「ここ」と言いたくなる

病院での検査の流れ

問診のあと、前方インピンジメントテストを行います。仰向けで股関節を約100°曲げ、内側にひねって痛みが出れば陽性です。

続けて、X線やCTで骨の形を見ます。関節唇の傷みを見るときは、MRIを使います。日本股関節学会は2015年に診断指針を出しています。

ご自宅での確認は、これだけ。仰向けで膝を胸へ引き寄せ、痛む手前で止めます。内側にひねる動きは、ご自宅ではやらないでください。

変形性股関節症との見分けは、パトリックテストの解説も参考になります。

病院で聞いた言葉の読み替え表(タップで開きます)

関節唇損傷:受け皿のふちのクッションが傷んでいる

カム型:太ももの骨の付け根に出っ張りがある

ピンサー型:受け皿のふちが出ている、深い

α角(アルファかく):出っ張りの大きさを測る角度の数字

股関節鏡視下手術:小さな穴からカメラを入れて、出っ張りやふちを整える手術

病院へ行く目安

こんなときは、先に整形外科へ

  • じっとしていても、夜にズキズキ痛む
  • 転んだ・ぶつけたあとから、脚に体重をかけられない
  • 熱がある、脚に力が入らない、しびれる
  • 成長期のお子さんが股関節を痛がる、足を引きずる(ペルテス病・大腿骨頭すべり症のことがあります)
  • 運動や生活を調整して2〜3週間たっても変わらない

こうした場合は、当院でも先に病院をご案内します。

治療の考え方

手術か運動か。研究はこう言っています

英国で222人を約3年追ったFAIT試験があります。日常動作の点数は、手術の人が84.2、運動中心の人が74.2でした。

手術のほうが上、と聞くと迷いますね。ところが2025年のメタ解析は、差は出たものの「臨床的に意味のある最小の差」には届かなかった、と結論づけています。

手術と運動、どちらが正解なのか。答えは一つではなく、痛みの強さと、暮らしでの困り具合で決まります。

自宅ケア

自宅でできる運動は、無理のない量から

運動は、痛みと動きを良くする可能性がありますが、質の高い大規模な試験は、これからです。

運動の「量」も決まっていません。運動を使った52の研究のうち、29は中身の記載がなく、最適な回数や強さは誰にも言い切れないのが現状です。

そこで当院は、ぶつかる角度を避け、股関節を支えるお尻と体幹を鍛える考え方で、無理のない量から始めます。以下の回数は研究で決まったものではなく、当院の目安です。

① 横向きの脚上げ(お尻の横)

横向きに寝て、上の脚をまっすぐ天井へ。10回×2セット。痛みが10段階で3を超えない範囲で。

② お尻上げ(ブリッジ)

仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げて2秒止める。10回×2セット。

③ 股関節の前をのばす

片膝立ちで骨盤を少し前へ。30秒キープを片側2回、左右で合計2分。痛む手前で止めます。

やめておきたい動き

  • 深くしゃがみこむ
  • 膝を胸へ強く引き寄せて、内側に倒す
  • 痛いのを我慢して、のばし続ける

豆知識

人差し指を立てる若林院長

豆知識

レントゲンの出っ張り、実は3人に1人

症状のない人の股関節を調べたFrankの研究では、カム型の出っ張りは37%。スポーツ選手に限ると54.8%、一般の人は23.1%でした。

つまりスポーツ選手の半分以上が、骨の出っ張りを持っています。写っただけで、人生まで決まるわけではありません。

よくある質問

よくある質問

FAIは手術しないと治りませんか?

手術が必要になる方もいますが、運動などの保存療法で落ち着く例も少なくありません。痛みが強く、骨や関節唇の傷みがはっきりしているときは、手術が検討されます。

スポーツは続けても大丈夫ですか?

痛みが出る動き(深く曲げる・ひねる)は、いったん減らします。FAIT試験の運動プログラムにも「活動の調整」が含まれていました。痛みが10段階で3以内に収まる範囲が、当院の目安です。

ひとりで悩まず、まずはご相談ください

股関節の痛みの相談は、LINEか電話でどうぞ。

〒930-0825 富山県富山市上飯野新町三丁目91-1
平日 13:00〜20:00(受付19:30まで)/土曜 9:00〜12:00/日曜・祝日は休診

股関節のほかのお悩みは、股関節のお悩みページからどうぞ。

参考文献(タップで開きます)

1. Griffin DR, et al. The Warwick Agreement on femoroacetabular impingement syndrome (FAI syndrome): an international consensus statement. Br J Sports Med. 2016;50(19):1169-1176.

2. Frank JM, et al. Prevalence of femoroacetabular impingement imaging findings in asymptomatic volunteers: a systematic review. Arthroscopy. 2015;31(6):1199-1204.

3. Palmer A, et al. Medium-term results of arthroscopic hip surgery compared with physiotherapy and activity modification for the treatment of femoroacetabular impingement syndrome: a multi-centre randomised controlled trial. Br J Sports Med. 2025;59(2):109-117.

4. Palmer A, et al. Arthroscopic hip surgery compared with physiotherapy and activity modification for the treatment of symptomatic femoroacetabular impingement: multicentre randomised controlled trial. BMJ. 2019;364:l185.

5. Lamo-Espinosa JM, et al. Efficacy and safety of arthroscopy in femoroacetabular impingement syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Sci Rep. 2025;15:7775.

6. Kemp JL, et al. Improving function in people with hip-related pain: a systematic review and meta-analysis of physiotherapist-led interventions for hip-related pain. Br J Sports Med. 2020;54(23):1382-1394.

7. Estberger A, et al. Are exercise therapy protocols for the treatment of hip-related pain adequately described? A systematic review of intervention descriptions. Int J Sports Phys Ther. 2023.

8. 山崎琢磨. 大腿骨寛骨臼インピンジメントの診断法―エビデンスに基づいて. 臨床整形外科. 2023;58(7):847-854.

9. 梅津太郎, 大矢昭仁, 金治有彦. 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)に対する股関節鏡視下手術の成績―保存療法との比較を踏まえて. 臨床整形外科. 2023;58(7):855-861.

10. 金治有彦. 股関節インピンジメント(大腿骨寛骨臼インピンジメント:FAI)[私の治療]. 日本医事新報.

この記事は一般的な情報であり、診断や治療の代わりにはなりません。強い痛みや気になる症状は、医療機関にご相談ください。

若林接骨院 院長 若林直人

この記事を書いた人

若林 直人

若林接骨院 院長

柔道整復師

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