筋膜は大切な役割
筋膜という言葉を耳にしたことはありますか?筋膜は筋肉を包む薄い膜で、全身をつなぐボディースーツのような存在です。この筋膜がスムーズに滑ることで、筋肉は効率よく動けるのです。
逆に、同じ姿勢が続く、運動不足、疲労が蓄積する。このような状態が続くと、筋膜の滑走性が低下し、身体は動きにくくなります。すると、本来なら股関節や背中が担当する仕事まで、腰が代わりに行うようになります。
つまり、筋肉が硬いのではなく、身体全体の動きが偏っている。これが、これからお話しする『筋・筋膜性腰痛』を理解する大切なポイントです。それでは、その症状がどんなものかを見ていきましょう。
筋・筋膜性腰痛の症状
次のような症状がある方は、筋・筋膜性腰痛の可能性があります。当てはまる項目が多いほど、筋肉や筋膜への負担が積み重なっていると考えられるでしょう。
□ 朝起きると腰がこわばる
□ 長時間座っていると腰が痛くなる
□ 立ちっぱなしでも腰がつらい
□ 動き始めは痛いが、少し動くと楽になる
□ 重い荷物を持つと腰が痛い
□ 前かがみの姿勢が続くと痛い
□ 腰を押すと痛い場所がある
□ マッサージを受けると一時的には楽になる
□ 夕方になると腰が重だるい
□ 休むと少し楽になる
痛みは突然ではなく、積み重ねで起こります
昨日まで何ともなかったのに、朝起きたら急に腰が痛い!そう感じる方は少なくありません。しかし実際には、昨日突然壊れたわけではなく、長時間のデスクワーク。運動不足。姿勢のクセ。筋力低下。疲労の蓄積。
こうした小さな負担が毎日積み重なり、最後の一押しで症状が現れるケースがほとんどです。例えるなら、コップに少しずつ水を入れ続けている状態です。最後の一滴で水はあふれますが、本当の原因は最後の一滴ではありません。腰痛も同じです。
動くと痛いだけではありません
筋・筋膜性腰痛の特徴は、痛み方にもあります。例えば、朝だけ痛い。夕方だけ重い。立ち上がる瞬間だけ痛い。長時間座ると痛い。歩いているうちに楽になる。日によって痛い場所が少し変わる。
このように症状が変化しやすいのも特徴です。筋肉は疲労や血流の影響を受けやすいため、その日の体調や活動量によって痛み方が変わることがあります。
痛い=壊れているとは限りません
腰が痛いと、骨がズレたのでは?と心配になる方も少なくありません。しかし、筋・筋膜性腰痛では身体を動かすことで症状が和らぐことも多くあります。これは、筋肉や筋膜の血流が改善し、関節や組織がスムーズに動き始めるためと考えられています。
もちろん、痛みを我慢して無理に動く必要はありません。大切なのは、「怖がって動かない」のではなく、自分の身体に合った範囲で少しずつ動かしてあげることです。
こんな症状なら早めの受診をおすすめします
筋・筋膜性腰痛は適切なケアで改善が期待できます。しかし、次のような症状がある場合は、筋・筋膜性腰痛以外の病気が隠れている可能性もあります。
・脚に強いしびれが続く
・力が入りにくい
・排尿や排便に異常がある
・発熱を伴う
・安静にしていても激しい痛みが続く
・転倒や交通事故など強い衝撃のあとから痛みがある
このような場合は、早めに医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。
放っておくとどうなる?
そのうち治るだろう。そう思って頑張り続けてしまう方も多くいらっしゃいます。もちろん、一時的な疲労なら自然に回復することもあります。
しかし、身体の使い方が変わらないままだと、腰は何度も同じ仕事を繰り返すことになります。すると、以下のような悪循環に陥りやすくなります。
・腰痛を繰り返す
・動くのが億劫になる
・運動量が減る
・筋力が落ちる
・さらに腰へ負担が増える
まるで、残業続きで休みの取れない社員のようです。どんなに優秀な社員でも、休憩なしでは力を発揮できません。腰も同じです。それでは次に原因を見ていきましょう。
筋・筋膜性腰痛の原因
原因① 長時間同じ姿勢

筋・筋膜性腰痛で最も多い原因の一つが、動かなすぎることです。デスクワーク。車の運転。スマートフォン。テレビ。便利な時代になりましたが、その代わり身体は動く時間が減りました。
筋肉は、動くことで血液を送り出すポンプの役割も担っています。ところが同じ姿勢が30分、1時間、2時間と続くと、筋肉は徐々に疲労し、硬くなりやすくなります。つまり、腰にとって一番つらいのは動くことではなく、動かないことなのです。
原因② 股関節がサボっている
本来、物を拾うときや立ち上がるときは、股関節が大きく動くことで腰の負担を減らしています。しかし、股関節が硬くなると、今日は腰さん、お願いします。という流れになります。
これを毎日繰り返していると、腰の筋肉は疲労し、痛みにつながります。股関節の柔軟性を保つことは、腰痛予防の第一歩です。
原因③ お尻の筋肉が働いていない
大殿筋や中殿筋は、身体の中でも特に力が強い筋肉です。歩く。階段を上る。立ち上がる。これらの動作では、お尻が主役になるはずです。
しかし、座る時間が長くなると、お尻の筋肉は少しずつ働きにくくなります。その結果、お尻が担当する仕事まで腰が引き受けることになります。
原因④ インナーマッスルの機能低下
腰を支えているのは、腹筋だけではありません。腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋。これらが協力して腹圧を高めることで、腰への負担を軽減すると考えられています。まるで天然のコルセットです。
逆に、このチームの連携が乱れると、腰椎は不安定になり、表面の筋肉が必要以上に頑張ることになります。
原因⑤ 胸椎が動いていない

腰が痛いのに、背中?と思われるかもしれません。実は、胸椎は身体をひねったり、反らしたりする大切な役割があります。胸椎が硬くなると、本来そこで行うはずの動きを腰が代わりに担当します。
原因⑥ 呼吸が浅くなっている
呼吸と腰痛。一見関係なさそうですが、実はとても深い関係があります。呼吸で働く横隔膜は、姿勢を安定させるインナーマッスルの一員でもあります。
ストレスや猫背などで呼吸が浅くなると、腹圧が十分に働かず、腰への負担が増えることがあります。だからこそ、深呼吸も立派な腰痛対策の一つです。
【補足】筋肉が硬いだけでは説明できません
以前は腰が硬いから痛いと考えられることが多くありましたが、筋力。持久力。柔軟性。身体の使い方。生活習慣。心理的ストレス。睡眠。こうした多くの要素が重なり合って腰痛が起こります。
つまり、筋・筋膜性腰痛は、身体からの総合的なサインなのです。
以上に筋・筋膜性腰痛を見てきましたが、今回の記事では症状の気づくための方法のみに主眼が置かれ、具体的なケアの手法に関して記されていません。
そこで、次回の記事では症状を防ぐための日々の取り組みについて、しかも自宅で行えるストレッチのやり方などを書きます。
