膝の軟骨は再生しないのですか?

「軟骨は一度すり減ったら戻らない」と言われた方は多いと思います。その話は半分あたっていて、残りの半分が、この1年でおもしろいことになっています。

結論

膝の軟骨は、自然には元通りになりにくい

大人の関節軟骨は、傷んだ部分を自力で埋め戻すのが苦手です。スタンフォード大学も、ふつうの条件ではほとんど再生しない組織だと説明しています。

ところが2025年11月、同じスタンフォードのチームが科学誌『Science』に報告を出しました。年をとったマウスの膝で「15-PGDH」という酵素の働きを止めたところ、薄くなっていた軟骨が厚みを取り戻したのです。

人の膝の軟骨サンプルでも、再生のはじまりを思わせる変化が見られました。ただ、患者さんの膝で効果を確かめた段階ではありません。薬になるまでには、まだ道のりがあります。

いますぐ使える話ではないので、期待しすぎないでください。それでも「軟骨は絶対に戻らない」という前提が少し揺らぎはじめていることは、知っておいて損はないと思います。

痛みの正体

痛みの出どころは、軟骨とは限りません

軟骨には神経が通っていません。すり減っても、本人にはひとことも知らせてくれない、無口な組織です。

では、痛みを感じているのはどこでしょう。膝のお皿の下にある脂肪のクッション(膝蓋下脂肪体)は神経が豊富で、痛みの出どころになりうると報告されています。関節を包む膜(滑膜)の炎症も、痛みと結びつくと考えられています。

数字にも表れています。45歳以上の約3割で、X線に膝の変化が写ります。そのうち強い症状があるのは、約半数です。

つまり、軟骨がすり減っていても痛くない人は大勢います。2025年の総説でも、膝は軟骨だけでなく骨・滑膜・筋肉をふくむ「関節全体の病気」として捉えられています。

だから私は、軟骨だけを見ずに、膝まわり全体の使い方と負担を整えることを大事にしています。

確かめる

病院での調べ方と、家でできる3問チェック

病院では、問診と触診のあとに、立った姿勢でX線を撮るのが基本です。実はX線に軟骨そのものは写りません。骨と骨のすき間の広さから、軟骨の厚みを推測しています。軟骨まで見たいときはMRIを使います。

日本整形外科学会の「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」は、診断から運動・手術まで、治療ごとに推奨度を示しています。

ご自宅では、次の3問で膝の様子を確かめてみてください。

① 朝や、座っていたあとの立ち上がりの数歩が、いちばん痛い

② 階段は、のぼりより下りのほうがつらい

③ 正座やしゃがみ込みがつらい。あるいは、膝を伸ばしきれない感じがある

2つ以上当てはまる方は、一度ご相談ください(当院の目安です)。

こんなときは、先に整形外科へ

・急に膝が腫れて、熱をもっている
・夜、じっとしていてもズキズキ痛む
・膝が引っかかって、動かない・伸びない
・転んだ、ひねった直後から強く痛む
・発熱をともなう

自宅ケア

軟骨が戻らなくても、膝は楽になります

膝は、使うほどすり減ると思っていませんか。

2025年10月のBMJに、217の試験・15,684人を比べた分析が載りました。膝の痛み、動き、歩きやすさ、生活の質のすべてで、いちばん成績が良かったのは有酸素運動(歩く・自転車・水泳)です。確実性は「中くらい」と評価されています。

軟骨への影響も調べられています。運動をしても、軟骨が傷む形跡は見つかりませんでした。ただ、運動で軟骨が厚くなった、とまでは言えません。

日本でも、京都大学の黒木裕士さんが「膝にかかる力は強すぎれば軟骨を壊し、適度なら守る方向に働く可能性がある」と整理しています。

歩くとき、膝には体重の約2〜4倍の力がかかります。肥満や過体重の方の研究では、体重が1kg減ると、1歩あたりの膝への力が約4kg減りました。体重計は敵ではなく、膝の通訳です。

歩く

痛みが強く出ない速さで、週に2時間半〜3時間が目安です。運動の量は、多すぎても少なすぎても成績が落ちる「U字型」でした。ふつうの速さの散歩に置きかえた、おおよその数字です。

椅子からの立ち座り(太もも前)

椅子に浅く座り、手を使わずに立って、4秒かけて座ります。10回を1日1〜2セットで十分です。筋トレは、量を増やしても痛みの改善が大きくならなかった、という分析があります。がんばりすぎなくて大丈夫です。

ストレッチ(太もも裏)

椅子の端に座り、片脚をまっすぐ前に出して、かかとを床につけます。背すじを伸ばしたまま、股関節から体を前に倒してください。30秒キープを左右2回ずつ、合計2分です。痛みが出る手前で止めます。柔軟性の運動は、長期の痛みを減らす可能性が示されています。

人差し指を立てる若林院長

豆知識

歩くと、膝の軟骨は少し縮みます

歩いたあとに膝が縮んでいること、知っていましたか。膝を曲げ伸ばしすると、軟骨の厚みは0〜5%ほど減ります。でも30分ほど休むと戻る、という研究のまとめがあります。軟骨はスポンジのように、つぶれては戻ることをくり返しています。

Q&A

よくある質問

Q. 階段や散歩は、膝を悪くしませんか?

先ほどのBricca らのまとめでは、運動で軟骨が傷む形跡は見つかっていません。痛みが強い日は歩く量を半分にして、様子を見てください。

Q. 朝いちばんが痛いのは、軟骨が乾いているからですか?

そう説明されることはありますが、言い切れる研究は私が調べた範囲では見つかりませんでした。動かすことで痛みが減るのは、BMJ 2025の分析が示しているとおりです。

病院で聞いた言葉の読み替え表(タップで開きます)
病院で聞く言葉やさしく言うと
軟骨がすり減っている関節のクッションが薄くなっている。ただし痛みの強さとは比例しません
関節裂隙が狭いX線で、骨と骨のすき間が狭い。軟骨が薄い目安です
骨棘(こつきょく)骨のふちにできる、トゲのような出っ張りです
水が溜まる関節の中の液体が増えた状態。炎症のサインのひとつです
変形性膝関節症軟骨だけでなく、関節全体が少しずつ変わっていく状態です

膝の内側の痛みが気になる方は鵞足炎の記事、膝のお悩み全体は膝のページもどうぞ。

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参考文献・研究の出典(タップで開きます)

1. Singla M, Wang YR, Goodman S, Blau H. Inhibition of 15-hydroxy prostaglandin dehydrogenase promotes cartilage regeneration. Science. 2025 Nov 27:eadx6649. doi:10.1126/science.adx6649

2. Stanford Medicine News. Inhibiting a master regulator of aging regenerates joint cartilage in mice. 2025 Nov 27.

3. Yan L, et al. Comparative efficacy and safety of exercise modalities in knee osteoarthritis: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2025;391:e085242. doi:10.1136/bmj-2025-085242

4. BMJ Group. Walking, cycling and swimming likely best exercise for knee osteoarthritis(報道発表). 2025 Oct 15.

5. de Wit J, Haber T, Hall M, et al. Association between prescribed dosage of resistance exercise and change in pain and physical function in knee osteoarthritis: a systematic review with meta-regression. Musculoskeletal Care. 2025. doi:10.1002/msc.70110

6. Comparative efficacy of various exercise modalities and doses in reducing pain and improving function in older adults with knee or hip osteoarthritis: a Bayesian network and dose-response meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2025. doi:10.1016/j.apmr.2025.08.013

7. Bricca A, Juhl CB, Steultjens M, et al. Impact of exercise on articular cartilage in people at risk of, or with established, knee osteoarthritis: a systematic review of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2019;53:940-947.

8. Immediate and delayed effects of joint loading activities on knee and hip cartilage: a systematic review and meta-analysis. Sports Med Open. 2023.

9. Messier SP, Gutekunst DJ, Davis C, et al. Weight loss reduces knee-joint loads in overweight and obese older adults with knee osteoarthritis. Arthritis Rheum. 2005;52:2026-2032.

10. Bergmann G, Bender A, Graichen F, et al. Standardized loads acting in knee implants. PLoS ONE. 2014;9(1):e86035. doi:10.1371/journal.pone.0086035

11. An emerging player in knee osteoarthritis: the infrapatellar fat pad. Arthritis Res Ther. 2013.

12. Infrapatellar fat pad in knee osteoarthritis: a comprehensive review of pathophysiology and targeted therapeutic strategies. Int J Mol Sci. 2025;26(21):10408. doi:10.3390/ijms262110408

13. 日本整形外科学会 監修. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂; 2023.

14. 黒木裕士. 変形性膝関節症予防のための運動療法. 理学療法ジャーナル. 2023;57(12):1430-1436.

この記事は一般的な情報です。診断や治療の代わりにはなりません。強い痛みや急な腫れがあるときは、医療機関を受診してください。

若林接骨院 院長 若林直人

この記事を書いた人

若林 直人

若林接骨院 院長

柔道整復師

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