腰痛

腰痛画像

腰痛は、日本人が訴える自覚症状の上位に、いつも顔を出す悩みです。この記事では、新しい研究をもとに、原因と病院へ行く目安、自宅でできる対策をお話しします。

腰痛とは

腰痛は世界で6億人以上。病名ではなく「症状」の名前です

2020年、世界で腰痛に悩む人はおよそ6億1,900万人でした。2050年には8億4,300万人に増えると予測されています。恐ろしいですね。

日本も同じです。厚生労働省の「国民生活基礎調査」では、男女とも腰痛と肩こりが、自覚症状の上位に入ります。

ところで、腰痛は病名ではありません。日本整形外科学会と日本腰痛学会の『腰痛診療ガイドライン2019』は、第12肋骨(あばらの一番下)からお尻のしわまでの間にある痛みを、腰痛と呼んでいます。

同じ「腰痛」でも、中身は人によってまるで違います。あなたの腰痛は、どのタイプでしょうか?

痛みの期間

4週間と3か月で、腰痛の呼び名が変わります

ガイドライン2019は、痛みが続いた期間で3つに分けています。

  • 急性腰痛:発症から4週間未満。ぎっくり腰(急性腰痛症)もここに入ります
  • 亜急性腰痛:4週間以上、3か月未満
  • 慢性腰痛:3か月以上続くもの

呼び名が変わると、やることも変わります。急性なら、動ける範囲で普段どおりに。3か月以上続くなら、運動を続けること(WHO 2023)。この2点を覚えておけば、迷いは減ります。

指を立てて話す若林院長

豆知識

ぎっくり腰は、重い荷物より「くしゃみ」で起きる

ぎっくり腰のきっかけは、重いものを持ち上げたときとは限りません。くしゃみ、椅子から立つ、落ちたものを拾う。そんな小さな動きで起きることが、私の経験では多いです。いちばん危ないのは、腰を曲げながらひねった瞬間です。雪をスコップですくって放り投げる、あの動きですね。「魔女の一撃」と呼ばれますが、犯人はたいてい日常の動きです。

原因

腰の痛みの原因は、骨だけではありません

腰の骨(腰椎)は5つ積み重なり、体重を支えています。下へいくほど負担が増え、いちばん重いのが第5腰椎、次が第4腰椎です。

ヘルニアが第4・第5腰椎に多いのは、このためです。

腰椎の中には、馬尾(ばび)という神経の束が通っています。ここから、太ももの前の大腿神経や、お尻から脚の裏へ伸びる坐骨神経が出ています。腰に負担がかかると、お尻や脚の痛み、しびれとして現れるのはそのためです。

原因の多くは、筋肉や関節、椎間板にたまった負担です。WHOのガイドラインは、3か月以上続く腰痛の少なくとも9割は、原因となる病気が見つからないタイプだと見積もっています(WHO 2023)。

残りの一部は、腰以外に原因があります。

  • 内臓:胆石、膵炎、胃潰瘍、尿路結石、子宮内膜症
  • 血管:大動脈瘤(血管のふくらみ)
  • 骨の病気:がんの転移、細菌感染
  • 心:うつ、ストレスによる体の不調

見分けの入口は、動かしたときの変化です。動くと痛む腰痛は、筋肉や関節のことが多いです。動いても休んでも変わらない痛みや、夜から明け方に強まる痛みは、私は一度、病院で調べてもらいます。

病院へ行く目安

こんなときは、先に整形外科へ

次のどれかに当てはまるなら、まず病院で検査を受けてください。

  • 転んだ、交通事故にあった直後
  • じっとしていても、夜も痛い
  • 熱がある、理由のわからない体重減少がある
  • がんの治療を受けたことがある
  • おしっこや便が出しにくい、股のまわりの感覚がにぶい
  • 脚に力が入らない

脂汗が出るほどの突然の激痛は、尿路結石や血管の病気のこともあります。迷わず受診してください。

痛みが2週間たっても治まらず、悪化しているときも、検査をおすすめします。1週間ほどで和らぐなら、一時的な炎症のことが多いです。

動けないほど痛い最初の1〜3日は、休んで構いません。ただ、寝込む日が長いほど、回復は遅れます。ガイドライン2019も、動ける範囲で活動を保つことを勧めています。

腰をかばって3日寝込んでも、腰は感謝してくれません。

自宅ケア

自宅でできる3つ:歩く、のばす、お尻を上げる

腰痛は、治ったあとが勝負です。回復した人のおよそ70%が、1年以内に再発するといわれています。

2024年、オーストラリアのマッコーリー大学の研究チームが、WalkBack試験の結果をLancetに発表しました。腰痛から回復した701人を、歩く習慣と腰痛の教育をつけたグループと、何もしないグループに分けています。

結果は、歩いたグループで、生活に支障が出る再発が28%、受診が必要になる再発が43%減りました。再発までの期間も、およそ2倍にのびています。

お金も道具もいらない運動で、これです。やらない手はないと思いませんか?

① 歩く(痛みが落ち着いてから)

試験では、約6か月かけて、歩く時間を少しずつのばしました。いきなり長く歩かず、短い散歩から始めてください。

痛みがぶり返しそうな日は、短めで構いません。

② のばす(1か所2分)

止めてのばす静的ストレッチは、反動をつける方法より、関節の動く範囲が大きく広がりました。77の研究をまとめた分析の結果です。

週に5日以上、合計5分以上のばすと、動く範囲が広がりやすいというまとめもあります。

私のおすすめは、30秒キープを2回、左右で1か所2分です。

  • ひざ抱え(腰とお尻):仰向けで、片ひざを胸へ引き寄せて30秒。反対側も30秒。これを2セット
  • ももの裏:椅子に浅く座り、片脚を前へ。背すじをのばしたまま体を倒して30秒。左右2セット

正直に言うと、腰痛に「このストレッチが最強」という決定的な研究は、私が調べた範囲ではありません。上の研究も、腰痛のない人が中心です。痛みの出ない範囲で、毎日続けることを優先してください。

③ お尻を上げる(筋トレ)

仰向けでひざを立て、お尻をゆっくり持ち上げて3秒止め、ゆっくり下ろします。10回を1セットで、1日2セットから始めてください。腰を反らせず、お尻の力で上げるのがコツです。

指を立てて話す若林院長

豆知識

腰痛の運動は、「最強のメニュー」より「続くメニュー」が勝つ

慢性腰痛への運動の効果を調べたCochrane(コクラン)の分析は、249の試験、24,486人を集めました(Hayden 2021)。運動した人は、何もしない人より、痛みが100点満点で平均15点ほど低くなっています。運動の種類の優劣より、続けられるかどうかが効く。私もそう考えています。三日坊主の方にも、希望はあります。

これはやめておきましょう

  • 痛みが脚に走る、しびれが強くなる動きは、その場で中止する
  • 反動をつけて、勢いよくのばさない
  • 痛い方向へ、無理に反らさない
  • 痛みを我慢して、長い時間運動しない

当院の施術

当院での、腰痛の診かた

WHOの2023年のガイドラインは、慢性の腰痛に運動プログラムと、痛みについての説明を勧めています。条件つきですが、脊椎の徒手療法(手による施術)も選択肢に挙げています。

当院も、手技だけでは終わらせません。お話を聞き、動きを確かめ、帰ってからの動き方までお伝えします。

  1. お話を聞く:いつから、どんな動きで痛むか、夜はどうか
  2. 動きを見る:前に曲げる、反らす、ひねる。押して痛む場所、脚のしびれ
  3. 手技と運動のアドバイス:その日の状態に合わせて行います
  4. 病院が必要なら、はっきりお伝えする:検査や受診をすすめることもあります

よくある質問

腰痛のよくある質問

ぎっくり腰のとき、冷やす?温める?

痛めた直後で熱っぽいときは、冷やすと楽になることが多いです。温めて気持ちよければ、温めても構いません。温めて痛みが強くなったら、すぐにやめてください。

レントゲンやMRIは、撮ったほうがいい?

原因が画像に写らない腰痛は多いです。前の章の目安に当てはまるとき、痛みが2週間たっても悪化しているときは、撮ってもらいます。

痛いときも、歩いていい?

痛みが強まる歩き方は控えてください。楽な範囲の短い散歩なら構いません。WalkBack試験は、痛みが治まった人の再発予防が対象でしたので、痛みの強い間は無理をしないでください。

何回通えば良くなりますか?

人によって違うので、回数は言い切れません。急性の腰痛は、1週間ほどで和らぐ方が多いです。初回に、見通しをお話しします。

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腰の痛み、ひとりで抱えないでください

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参考文献

参考にした文献

  • Pocovi NC, et al. Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial. Lancet. 2024;404(10448):134-144.
  • Ferreira ML, et al. Global, regional, and national burden of low back pain, 1990-2020, its attributable risk factors, and projections to 2050. Lancet Rheumatol. 2023;5:e316-e329.
  • Hayden JA, et al. Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2021;(9):CD009790.
  • World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings. Geneva: WHO; 2023.
  • Konrad A, et al. Chronic effects of stretching on range of motion with consideration of potential moderating variables: a systematic review with meta-analysis. J Sport Health Sci. 2024;13(2):186-194.
  • Thomas E, et al. The relation between stretching typology and stretching duration: the effects on range of motion. Int J Sports Med. 2018;39(4):243-254.
  • 日本整形外科学会・日本腰痛学会 監修『腰痛診療ガイドライン2019』
  • 厚生労働省「国民生活基礎調査」(令和元年・令和4年)

この記事は一般的な情報です。症状には個人差があり、診断や治療の代わりにはなりません。強い痛みやしびれがあるときは、医療機関を受診してください。

この記事を書いた人

若林接骨院 院長 若林直人

若林 直人

若林接骨院 院長

柔道整復師

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