春のランナーと花粉症 ― 院長のちょっとした実体験から

春というのは、本来とても気持ちの良い季節です。気温は穏やか、日差しも柔らかく、「さあ運動でも始めようか」と思わせてくれる絶好のシーズン……のはずなのですが、花粉症の方にとってはなかなか試練の季節でもあります。

実は私自身も例に漏れず、この時期はなかなか苦労しております。

先日、水曜日に10kmほどランニングをしたのですが、「今日はよく走れたな」と満足したのも束の間。その日の夕方から鼻水が止まらず、翌日・翌々日とコンディションは急降下。どうやら、しっかり花粉も吸い込んでいたようです。

ところが不思議なことに、その数日後の土曜日にも同じようにランニングをしたにもかかわらず、「あれ?今日は意外と大丈夫だぞ」と、症状がほとんど出ない。
同じ距離、同じような環境でも、体の反応がまるで違うのです。

これは決して気のせいではありません。花粉症というのは、単純に「花粉の量=症状の強さ」ではなく、体の免疫状態やその日のコンディション、さらには気象条件などが複雑に絡み合って症状が現れます。

医学的に言えば、花粉症は「IgE抗体」を介したⅠ型アレルギー反応です。体内に侵入した花粉に対して免疫系が過剰に反応し、ヒスタミンなどの化学物質が放出されることで、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・喉の違和感といった症状が出ます。

ここでポイントなのは、「反応のしやすさ」が日によって変動するという点です。

例えば、
・前日の睡眠不足
・ストレス
・腸内環境の変化
・気温や湿度、風の強さ
こういった要素が重なることで、同じ花粉量でも症状が強く出たり、逆に軽く済んだりするのです。

また、「これまで大丈夫だったのに、急に花粉症になった」という話もよく耳にします。これは体内でアレルゲンに対する感作(免疫が記憶すること)が徐々に蓄積され、ある日“閾値”を超えたタイミングで発症するためです。山仕事で長年スギに囲まれていた方が、ある年を境に突然発症するのもこのためです。

さて、対策についてですが、ここは非常に重要です。

結論から言えば、「症状が出る前から薬を使うこと」が最も効果的です。

私はよく患者さんにこう説明しています。
花粉症の症状を“5つのダメージ枠”と仮定すると、

・事前に薬を飲んでいれば → 4枠はブロックできる → 残り1枠で軽症
・症状が出てから飲むと → すでに4枠埋まっている → 薬は1枠分しか効かない

つまり、「先手必勝」です。
これは臨床的にも非常に理にかなった戦略で、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などは“予防的投与”の方が効果を発揮しやすいとされています。

とはいえ、現場ではなかなか理想通りにいかないのも事実です。

私自身、症状が強い日はどうしているかというと……
両鼻にティッシュを詰め、マスクを装着し、何食わぬ顔で診療しております。

もちろん、患者さんに鼻水を垂らすわけにはいきませんからね。医療者としての最低限のプライドです(笑)。

これから4月にかけて、スギやヒノキの花粉はピークを迎えます。まだまだ油断できない時期が続きますが、

・早めの内服
・マスクやメガネの活用
・帰宅時の花粉除去
・生活リズムの安定

こういった基本を押さえることで、症状は確実にコントロールできます。

医学は日々進歩しています。将来的には「花粉を気にせず春を楽しめる時代」が来るかもしれません。

それまでは、うまく付き合いながら、この季節を乗り切っていきましょう。

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